写真●POPPO.NET 取材・文●POPPO.NET
昨年春に東京GP&飛翔会CHにて自身初となる総合優勝を体験した柴田茂昭鳩舎(東京南部連合会)。2シーズン連続を狙った昨秋も東京東水沢ナショナル400Kで見事総合トップに輝き、「1度総合優勝したら2度目もある」というジンクスを早くに体現する。そのトリは自鳩舎の鉄板の配合式「輸入鳩×国産鳩」ではないものの、オランダ産スピードチャンピオン同士の直子! 共に期待度トップランキングの種鳩なだけに喜びはひとしおだ。「切れ味重視」にスタイルを変えながらも、かつての「安定感」は据え置きのまま。意識改革により柴田氏は大きな成長を遂げたようである。
1度の総合優勝は、2度目、3度目へと繋がっていく――。日本鳩界に伝わる‘勝利の循環’は、昨年東京GP、そして飛翔会CHで初勝利を挙げた柴田茂昭氏(東京南部連合会)の手に‘当然の如く’もたらされた。初金星を挙げた次シーズン、2012年秋季の東京東水沢ナショナル400Kレースで総合優勝――。江東、一之江――東地区隆盛の中距離レースでありながら、まさに会心の勝利であった。
果たして殊勲のヒロインは、昨年の東京GP及び飛翔会CHの総合優勝鳩然り、柴田鳩舎における鉄板の配合式「輸入鳩×国産鳩」――ではない。純然たる輸入鳩同士の直子であった。父親はオランダのローカルチャンピオン・ファンエックの作翔鳩で、ペローネ優勝など優入賞を重ねた末、中距離エースピジョン賞も獲得したスーパーレーサーだ。その父親もまた中距離エースピジョン賞1位を2回、2位を1回という翔歴を誇る、ファンエックの最高傑作。母親もまた2001年の若鳩チャンピオンで、ヤンセンを系源とする‘ガイス=ペータース’のスピードラインである。かくにもオランダの中距離バード――「スピード+早熟」を象徴するようなトリであり、また系統だ。
一方、母親はジャック=ペーレン作翔にして、父鳩と同タイプの短距離チャンピオン。全兄弟にシメイ、モリンコートで2位を収めたレーサーがおり、当たり配合で生まれたトリである。‘ヤンセン’、‘ルド=クラーセン’、そして近年ブームになっている‘キース=ボスア’といった、スピード血統にして早熟系の代名詞ともいえる飛び筋で構成。かつ、ブールジュの万羽優勝の直系にもあたる。柴田氏2度目の総合優勝鳩は、「早熟スピ―ド系×早熟スピード系」で創出されていたのだ。そのため、400K総合優勝鳩自身、筋肉隆々なのはもちろん、若鳩でありながら表情の甘さは別として、ボディと翼の構造は成鳩とさほど変わらない風格を備えている。かつ両親共にエースピジョンタイプであるがゆえ、100K、200Kでは上位入賞、300Kでは2位に輝いていた。
★NL02-522191 BC J=ファンエック作翔
2005年中距離エースピジョン賞9位
ペローネ278K5,304羽中2位(1,880羽中優勝)
ヘンシス7,880羽中5位 モーリンコート14位
ホウデン174K8,448羽中18位、7,996羽中23位他
★レイニー
NL07-2098379 BC ジャック=ペーレン作翔
レセル1,560羽中2位
ヤンセン、ルド=クラーセン、キースボスアの混成系
全兄弟/チメイ2,437羽中2位、2,095羽中4位
モリンコート1,477羽中2位
鉄板の配合式でなくとも、柴田氏はこのペアには大きな期待を寄せていたようである。彼の種鳩には独自のランキングがあり、それは脚に装着するカラーリングの数と比例。総合優勝鳩の父親は2つ、母親には最高ランクの3つが装着されていた。なお後者についてはすでに作翔者の下でチャンピオンを輩出していたようである。だが翔歴、そして期待とは裏腹にブリーダーとして鳴かず飛ばず…。それも鉄板の配合式を採用しても――だ。それが柴田氏にタブーを触れさせる大きな要因となる。
輸入鳩同士での配合――。
決して‘ない’パターンではないが、かつて地区CH賞、日本優秀鳩舎賞といった全国タイトルを獲得した時のポイントゲッターも、鉄板の配合式で生み出されたトリばかり。試験的にならまだしも勝ち行く姿勢で固定されたものを変更するということは、彼にとって冒険以外なにものでもなかった。だが、リスクが高ければ高いほど勝った時の喜びが大きいのはいわずもがな。柴田氏は前回の飛翔会CH総合優勝の時のようなあいまいな手ごたえではなく、今回は勝利の味を充分に堪能できたのは言うまでもない。
昨秋の柴田氏は、前回のCLOSE UP内で書かれていたように‘勝ちに行く’ことを非常に意識していた。配合面然り、管理法面でもそれは見られている。例年では秋用と遅っ子を一緒にして管理するのだが、昨年は完全に別々のカリキュラムで調教。秋用のトリのみを徹底的に鍛えこんだ。手法として個人訓練は行わず、もっぱら日の出直後からの舎外のみ。旗を振りその後は立たせておくといったスタンダードな強制を軸
に行った。餌は通常の配合飼料に体作りのためにフランス産メイズを2割ほどプラス。常に満腹に食わせた。シーズンに入っても舎外中心は変わらずだが、200K以後インターバルが2週間ほどになるため、80Kの個人訓練を各1発打っている。疲労回復にも力を入れ、帰還直後は整腸作用のあるサプリメントを与え、舎外を再開するタイミングで抗生物質、トリコモナス、コクシジウムを投薬。餌は「配合飼料+フランス産メイズ2割」を食わせた後、アサノミ、サフラワー、ナタネ、シードで配合された小粒を単品で与えた。若鳩の調教時と同じ、満腹まで食わせ、残したら破棄するといったスタイルである。これらは柴田氏が海越え以降――東京GPを制した時と同様の手法であり、本気の証拠。なお秋で採用したのは初めてだったという。かくにも意識改革がもたらした勝利だった。
「今春も総合優勝狙いですね」。
すでに開幕している2013年春シーズンでは、東京東Rgで3度目の総合優勝に肉薄。総合2位に輝いている。しかも昨秋もそうだったが、安定感はなんと据え置き! 全国タイトルから総合優勝へと照準を変えたことは、柴田氏をフライターとして大きく進化をさせた。
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【2012年秋&2013年春・柴田茂昭鳩舎の総合レースにおける活躍】
■2012年秋 | |
★東京東連盟水沢N400K | 1,993羽中総合優勝(連合会優勝)、4位、26位、46位、59位 |
★東京東連盟主催Rg500K | 1,449羽中総合19位、29位、32位 |
■2013年春 | |
★東京東連盟主催Rg500K | 2,442羽中総合2位(連合会優勝) 、12位、29位 |
★東京東連盟主催地区N700K | 1,145羽中総合18位 、42位、44位 |
★飛翔会主催CH800K | 1,255羽中総合9位、27位、35位 | ★東京東主催桜花賞1000K | 170羽中総合3位、5位、23位 | ★東日本実行委員会主催東日本GN1100K | 33羽中連盟4位 |
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