写真●POPPO.NET 取材・文●POPPO.NET
あの男が日本鳩界に帰ってきた! わずか20代の若さでシルバー賞2回、ハンドラー時代を数えればそれ以上の受賞数を誇り、なおかつ日本鳩レース協会の「日本優秀鳩舎賞」も獲得したこともある。神田亮介――。2008年突如イタリアに渡った若武者が、カムバック後いきなり地区CH特別賞、そしてベルギー王立愛鳩家協会(KBDB)協会賞・南関東地区1位というスーパーチャンピオンを創出。わずか1シーズンで全国タイトルを2つも獲得し、注目を浴びた。この華麗なる復活劇に迫る。
彼は日本にいなかったはずでは――。
昨年、椿山荘「オリオンの間」にて開催されたピジョンスポーツの祭典「全国著名愛鳩家の集い」の檀上に上がった神田亮介氏の姿をみて出席者の多くが目を疑った。あれは確か2008年のことである。若干20代にしてシルバー賞2回――父・神田隆夫氏のハンドラー時代を数えれば3度の受賞歴をもち、日本鳩界のトップレースマンに登りつめた彼だが、自身の事業立ち上げのため鳩飼育を中断。イタリアに渡った。なぜその彼がこの壇上に…?
その答えはいたってシンプルだった。
――鳩レースをやることができなかったから。
かつて愛鳩の友誌に「イタリアでレースをやりたい」という夢を語っていた亮介氏だったが、現実は甘くなかった。1からの立ち上げということもあって、待っていたのは仕事に追われる毎日…。鳩レースとは年々、縁遠いものとなっていった。だがそれはそれでいい――。忙しくとも充実な時に亮介氏はそう思うようになっていた。
亮介氏は幼いころから動物が好きだった。あらゆる生き物を飼育し、レース鳩もその1つだっただが、やはりそれは特別なものだったという。中学生からはじめ、父・隆夫氏と共にレースにも参加。親子鷹で総合優勝はもちろん、先述のシルバー賞、そして日本鳩レース協会主催のタイトル「日本優秀鳩舎賞」を3度獲得してきた。二十歳を超えた時、単身西千葉連盟に加盟し、並み居る強豪を抑え、総合優勝を連発。結婚しイタリアに渡るまでのわずか3シーズンで6つの金星を挙げている。亮介氏にとって少年時代より触れてきたレース鳩は「全て」であり、アイデンティティでもあった。
眠れる獅子が目を覚ましたきっかけは、今より約1年前、ロシアに旅行にいったときだ。極寒の地とあって、呼吸するだけで痛い。そんな過酷な環境の中、亮介氏の目に逞しく生きる鳩――ドバトの姿を見かけた。凍てつくような寒さの中、生きるために必死に餌を探し、つばむ。そこには自ずと餌を与えている自分がいた。
「鳩レースがやりたい」。
無性に思った。フラッシュバックの如くよみがえった情熱が亮介氏を駆り立てる。イタリアに戻った後、すぐに事業にカタをつけ日本行のチケットを手に――自身の「全て」である神田鳩舎に向かった。2012年3月のことである。
彼にとって実に4年ぶりの帰国。父・隆夫氏と再会後まもなくバトンタッチがなされる。復帰戦は中距離のメイン「地区N」。いきなりここで魅せた。当日帰還率わずか数パーセントの難レースになりながら1羽帰し、総合3位に入賞。疲労具合を考慮して、
マドンナ
12LC05715 BW 神田亮介鳩舎作翔
2012年秋平成千葉連盟Rg500K1,534羽中総合優勝
全兄弟/12年秋平成千葉300K総合6位
父)DEN303 NL08-2128303 BC Humblet作翔
ISNES248K19,520羽中2位
ACHENE17,033羽中11位
母)B10-4199134 B ロメイン=レジェ―スト作
BIOIS優勝3回 ノヨン優勝2回 ヴィエルゾン優勝
Kamagurka(優勝7回他)×グーデ059(43回入賞)
マリアベッラ
12LC00465 B 神田亮介鳩舎作翔
12年秋平成千葉連盟300K5,140羽中総合優勝
全兄弟/12年秋平成千葉300K総合7位
父)NL10-1173510
RekkemNPO15,627羽中2位
モーリス・ブーツ、カニバールの筋
母)B11-50355302 ギド=ルークス作
祖父)B09-5186419
全兄弟/プリンセス(04年ブールジュN優勝他)
祖母)B07-5037004
ラステレーヌ優勝、アルジェントン144位他入賞多数
プリンセス全兄弟の娘
GPは流すもジャパンカップ併催の桜花賞では再び総合シングル入りを果たす。果たして前半戦こそ低調だった神田鳩舎だが、亮介氏が振るった地区N以降、成績が急上昇。結果、全国タイトル「地区CH特別賞」を受賞する。かつ地区N、そして桜花賞の両方で総合一桁台に入賞したポイントゲッターにいたっては、総理大臣賞にあたるベルギー王立愛鳩家協会(KBDB)会長賞の南関東地区1位に輝いた。
日本語で「復帰」を意味する「リプレーサ」という愛称をつけられたこのヒロインは、総合優勝40回以上もたらした神田輸入系の看板‘デスプリンター’、そしてジャパンカップ総合5位を生んだ銘種鳩‘ル・ロイ(ローイ優勝・ファンスピタール系)’と、自鳩舎において数々のヒーロー&ヒロインを輩出してきた鉄板筋で構成。なおかつ、現・世界ナンバーワンのチャンピオンと言われる‘ユーロ・ダイヤモンド(オースデントオリンピアード・マラトン部門優勝)’を生んだ名匠・カルトースの飛び筋までも異血として絡む。一流の中距離系と長距離系が巧みに混ざり合った末、ボディバランスは最高クラス。そのクオリティーはおそらく掴んだ者なら誰しもがうなずくほどの高さだろう。かくにも復帰わずか1シーズンにして神田鳩舎歴代1、2位を争うほどの代表鳩を誕生させたのだ。
充実の春を終え、秋には名義を「神田隆夫鳩舎」から「神田亮介鳩舎」に変更。そこで待っていたのは、1シーズン目以上の快進撃だった。開幕戦の200キロこそ8位、9位とやや控えめの成績に終わるも平成千葉地区連盟が主催とする300キロ以降は、パーフェクトに限りなく近い形となる。まず5,000羽以上が参加した300キロで総合優勝を筆頭に総合5、6、7、10位。続く400キロではアタマこそ逃したものの総合2位に入賞し、しかもトップ10に7羽も叩き込んだ。そしてファイナルのRgでは総合ワンツー! かつ連合会では優勝から7位、そして10位と8枠を占め、総合3レースとも怒涛の固め打ちを披露した。2005年に開眼――「鳩レースのコツをつかんだ」と愛鳩の友誌で語っていたその強さは、やはり揺るぎないも
のだった。
果たして今回の活躍鳩は、先述の‘デスプリンター’や‘ル・ロイ’はもちろん、その他東日本CH総合6位を生んだ‘クリスチャン’やジャパンカップ総合8位を輩出したデズメット&マタイスが作り上げた銘ブリーダー‘インデュライン’。そしてヤンセンを系源にもつ‘ガイジス=ペータース’と‘モーリス=ブーツ’など中断前から神田鳩舎の主力血統を担っていたラインが軸となり、そこに亮介氏自らがセレクトし、導入したT=マタイス作の400キロ万羽優勝鳩にオランダ中距離界の飛ばし屋・ハンブレット、そしてオリンピアードの常連鳩舎・ギド=ルークスの飛び筋――早熟&スピード系がプラス。層に厚みが加わった印象である。
目標はあくまで日本一――クラウン賞と日本最優秀鳩舎賞の2冠獲得だ。現在33歳という若さであるがゆえ不安視されるかもしれないが、彼を知る者からして決して夢物語ではないと語るだろう。現に今春のRg、地区N両レース共に2位から固め打ちを見せており、いずれのタイトルにも国内随一の高ポイントでクリア! かくにもそれだけのポテンシャル――競翔テクニックとそれを体現できる銘血を亮介氏は持っている。
|
|
【2012年・神田亮介鳩舎の総合レースにおける活躍】
★平成千葉連盟主催地区N700K | 3,038羽中総合6位(連合会優勝) |
★平成千葉連盟主催桜花賞1000K | 372羽中総合3位(連合会優勝) |
★平成千葉連盟主催300K | 5,140羽中総合優勝(連合会優勝)、5位、6位、7位、10位 |
★平成千葉連盟主催400K | 2,526羽中総合2位(連合会優勝)、3位、4位、5位、7位、9位、10位 |
★平成千葉連盟主催Rg500K | 1,543羽中総合優勝(連合会優勝)、2位、4位、5位、10位 |
★個人タイトル | 愛鳩の友誌主催地区CH特別賞 |
★鳩賞 | KBDB会長賞南関東地区1位 |
[an error occurred while processing this directive] |
[an error occurred while processing this directive] |
[an error occurred while processing this directive] |
[an error occurred while processing this directive] | [an error occurred while processing this directive] |
[an error occurred while processing this directive] | [an error occurred while processing this directive] |