★念願の羽越GNを制した山崎 等氏と今年生まれたばかりの愛孫・研太くん。
ヒロインの名前は研太くんから採用。
写真●POPPO.NET 取材・文●POPPO.NET
かつて福江からのGNで総合2位に入賞したこともある。名ロングフライターとして実績を残してきた山崎 等氏が、日本鳩界に戻ってきたのは2004年秋のことだ。再開1シーズン目で高松宮杯を制し、2006年、2007年とGNで総合シングル入賞。わずか1枠という狭き門の地区CH賞までも獲得する。だが、2008年に開催された福江GNでまさかの全滅…。ここでスペシャリストの血が一気に目覚めた。2010年、野母崎に舞台を変えたGNにて総合6位。今春は記録16羽の耐久戦となりながらブロック最多となる3羽打刻し、かつ自身初となる総合優勝まで達成する。究極の夢へのサクセスロードは、自身を否定することから始まった。
17年分溜まりに溜まった鳩レースへの情熱は、一気に爆発した。中断前は長距離のスペシャリストとして名を馳せていた山崎 等氏は、再開して初のシーズンとなる2004年秋の高松宮杯を制し、かつ連盟主催の総合レースでも見事総合優勝に輝く。かつての山崎氏を知る者からしたら驚く成績だが、舎外、訓練、給餌、鳩にかかわることならとにかく楽しくて仕方なかった。喜びの好循環は距離とは無関係に多数のタイトルをもたらし、2007年には新潟県の2連盟にとって獲得至難な全国タイトル「地区CH賞」まで獲得する。
「奈良尾からのGNでも総合一桁に2年連続で入ったし、何もかも順調にいっていた。しかし…」。
悪夢が訪れた。2008年、2009年に行われた福江GNで、自信をもって送り込んだレーサーを全て失ってしまう。1000K専門だった山崎氏にとって、とりわけ福江は得意中の得意。それだけにこの2年間はトラウマになるほどの絶望を味わったと言う。
「それでも帰ってきている人がいる。ということは自分のやり方が間違っているのだと思いました」。
GN以外でなら2008年にしろ2009年にしろ好成績は残している。だがこの最長レースで帰らなければ何も意味がない。全滅したことで眠っていたスペシャリストの血が完全に目を覚ました。そして山崎氏が着手したのは、今までの鳩作りを否定する行為――“作出”の改革である。今まではヤンセンならヤンセン、ローセンスならローセンスと近親もしくは異種同系――同じ作出者同士の配合でレーサーを作り上げてきた。だがGNでの全滅を受けて、純系ではなく雑種で勝負するよう別系統の鳩同士をかけるようにしたのである。
また、いいヒナを作るには親が健康でなくてはいけない。山崎氏は中断前には浸透していなかった分野であるがゆえ、若干苦手意識のあった「投薬」を刹那的でなく、年間プログラムに沿って行うよう心がけた。種鳩のケアにも力を注いだ結果、2009年のヒナの出来は今までより格段と良くなったという。
翌年、悔しくもGNは福江でなく手前の野母崎からでの開催であったが、山崎氏はここで6羽記録範囲内に帰し、自鳩舎トップははれて総合6位に入賞。過去2年間の雪
09FB05143 B ♀ 山崎 等鳩舎作翔
2010年春総理大臣賞・新潟連盟1位(北部地区9位)
羽越ブロック連盟野母崎GN総合6位
新潟連盟主催地区N総合41位
父)B02-1542266 BW レオン=マリット作
マルク=ローセンスメキシコ、フリューのライン
母)03FB11781 B 小黒良作鳩舎作
スカイジェット(1995年春羽越平戸GN総合優勝)の直子
×インブラヒット作ダックスN4位の娘
辱を見事に晴らす。もちろんアタマのトリは09年生まれ――ローセンスの銘鳩「メキシコ(リモージュN成鳩部門優勝)」、そしてその大元である「フリュー(ローセンスの基礎鳩)」のラインにインブラヒットを系源とする小黒良作鳩舎作のブリーダーをクロス。まさしく交配を変えての成果だった。ちなみにこのイヤリングは前戦の地区Nで総合41位に入っており、新潟連盟の総理大臣賞1位も獲得している。
そして今春、配合式を変えて作ったレーサーが再びGNを勇躍。全体で16羽しか記録できなかった難レースにおいて2日目に1羽、3日目に2羽とブロック最多となる計3羽の打刻に成功したのだ。かつトップのトリは、山崎氏が鳩レースをはじめてからずっと、そして中断の時にさえ胸に秘めていた大きな夢――GN制覇を成し遂げる。
むろんそれは本人にとって本懐であり、GNとは羽越3ブロックに所属する競翔家において特別なレースだ。喜びはひとしおだったことは言うまでもない。だがここで1つ残念なことがあった。それは運命の瞬
間――1番手の帰還を山崎氏は見逃してしまったのである。
「朝からずっと待っていたので、ヒナに餌をやっていなかった。さすがにそれはマズイと思い、昼食のタイミングで種鳩鳩舎に入り餌をやっていたら、その隙に帰ってきていた(笑)。ずっとこの時のためにがんばってきたのにそれに立ち会えないなんてね…。まあ、そんなもんなんだろうね」。山崎氏は笑う。
このドリームメイカーには、今年誕生したばかりの孫・研太くんの名前を採用した。がしかし、総合優勝鳩自体はメス。女なのに男の名前はおかしいのでは? と夫人から指摘され、それならばと‘ミス研太’と命名する。
愛孫の名を冠したヒロインは、レディとは思えぬほど非常に男らしいボディをもつ――筋肉隆々のトリだった。これは先述の総理大臣賞連盟1位に選出された俊鳩と同じくレオン=マリット作――‘メキシコ’と‘モンディアル(BDS紙&CB紙選定長距離エースピジョン賞1位)’など純然たるローセンス系の父親から継承。親子ともども中距離バードの印象だが、父は同じマリット作との交配で桜花賞総合7位、GN総合31位など、種鳩として長距離チャンピオンを産んだ実績を持っている。
一方、母親は種として目立った実績はないものの、日本を代表する強豪・横地光彦鳩舎が確立した‘横地スピード系’。‘ファルコン(静岡300K総合優勝)’、‘ドリームⅡ(静岡地区N総合優勝)’といった歴代チャンピオンの銘血が流れ、父親が純のローセンスならこちらは横地系の集大成――つまりどの距離できてもおかしくないラインだった。しかもそれは古くからの鳩友・横地光彦氏の父、光夫氏が自らセレクトした1羽でもあった。
「再開した時すぐに横地のオヤジさんのところにいった。GNを帰したいと言ったら、これ(母親)を持っていけって。やっと恩返しができたね」と感慨深い表情で語る。
果たして‘究極の夢’を叶えた山崎氏だが、ここで一旦はオールラウンドに狙いを戻すかと思いきや、目標はあくまでGNのみ! しかも今度はサバイバルでなく、れっきとした「レース」で勝ってみたいと語る。
「優勝できたのはもちろんうれしかったですが、帰ってこなかった鳩舎が多かった分申し訳ない気持ちもあった。だから今度は昔の福江のような展開で優勝したいね」。
今でこそ難所と言われているが、そもそも福江からのGNは好帰還ばかりだった。若干大げさな表現だが、当時は羽根さえあれば翔破できると言われていたとの由。かくにも次なる夢を喜々として語るその表情は、まさにかつてのそれ――GNのスペシャリストだった。
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【2012年春・山崎 等鳩舎の総合レースにおける活躍】
★羽越ブロック連盟主催GN1000K | 529羽中総合優勝(連合会優勝)、12位、13位 |
★新潟連盟主催地区N700K | 719羽中総合82位 |
★新潟連盟主催Rg500K | 934羽中総合183位 |
★新潟連盟主催SC300K | 1,174羽中総合59位、95位 |
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