★2人の師匠とがっちり握手! 左より横地光彦氏、神谷 中氏、高塚久雄氏。
写真●POPPO.NET/静岡のレース鳩仲間のHP 取材・文●POPPO.NET
日本最優秀鳩舎賞、シルバー賞2回。10年も満たないキャリアでありながら、トップフライターとして活躍する神谷 中鳩舎(尾張連合会)が、今春も魅せた。ファイナルの3大広域レース――東海ブロックCH総合3位、東海ブロックGP総合2位、東海ブロックGNでは見事総合優勝に輝く。地区CH賞の規定も平均入賞率1.0台に抑え、東海連盟において現役最多となる3度目の全日本優秀鳩舎賞を堂々受賞! 西日本で最も勢いのある男「神谷 中」に目が離せない。
解き放たれた情熱を一体どこへぶつければいいのだろうか――。
2011年3月。東日本大震災を機に春季レースは一斉自粛となり、東海連盟もまたその例からもれず、300キロ前にシーズンは中止となった。2度のシルバー賞に輝き、2007年には鳩レース協会の日本最優秀鳩舎賞に輝いたことがある。鳩歴1桁にして国内トップフライターの座につく神谷 中氏は、もう一つの日本一の称号「クラウン賞」獲得に向け、レーサーを順調に仕上げていた。被害者の気持ちを考えれば自粛するのは至極当然のこと――。とはいえ、真剣に取り組むがゆえ、不謹慎ながらもやりきれない気持ちがあった。そのためモチベーションを取り戻すには多くの時間を要したようである。
「その間はほぼ毎日やっているブログ(インターネット日記)を中止しました。気持ちの整理がついたのは、5月の始めくらい。今度の秋レースを地区CH賞獲るつもりでやってみようって!」。
例年なら抑えるところを最初からフルスロットルで参戦。日本一を獲るべく鍛え抜かれたレーサーに、もはや死角はなかった。開幕戦の豊野アップルレースで総合優勝を含みトップ10内に7羽入賞。続く三条ダービー300Kでも総合ワンツーで制し、ファイナルのRgでは総合優勝こそ逃すも総合6、7、9位とシングルに3羽、併催の菊花賞では参加わずか4羽で見事優勝を飾る。まさにパーフェクトに近い形で秋を終えた。
「この勢いなら春もいけると思っていました。しかし…」。
迎えた春シーズン、200K、300Kは抑え、中盤戦――地区CH賞、そして三賞への登竜門から勝負をかける。ところがRg、地区N、いずれもトリが反応してくれない…。規定はクリアできたものの、全国トップ8の座を狙うには困難な成績に終わる。理由はうすうす感じていた。いつもなら若鳩ないし1歳鳩が中心だったのが、今年は前年のレース自粛が影響し成鳩――2010年生まれが主軸。そのためなのか、舎外の飛びに物足りなさがあった。
この緊急事態に師匠の1人・横地光彦氏が訪問。コンディションをチェックしてもらい、アドバイスを求めた。がしかしゴールド賞4回の強豪は、例年に比べ若干軽めになっているが、コンディションは良好と判断。むしろこれで抜けて来ないことに理解を苦しんだようである。
それでも結果がでないのは成鳩の難しさなのか――。処方箋が出ぬまま、最後の長距離レースに突入する。調整法はあえて変えず、例年通り舎外をベースに持ち寄り2週間前に200キロを、1週間前に100Kの訓練を打ち、分離で持ち寄った。戦力の配分については、GNは海越えを経験した2009年生まれのメス10羽、それ以外の92羽をCHに投入する。
CHとGNには不安を抱えたまま臨んだ。がしかし、CHに送り込んだトリがなんと日没前に4羽も帰還する。この日追い風が吹いていたとはいえ、遠距離地帯の神谷鳩舎で当日入るのは至難の業。しかもうれしいことに他鳩舎に比べて速いという情報も入った。自鳩舎トップは2009年に同レースを制した「CHハルカ」の直子であり、またもう1人の師・クラウン賞3回の高塚久雄氏の代表鳩「GPキング(2002年北関東5地区GP最高分速)の直子! 自ずと「親子2代連続~」の期待に胸が躍る。
翌朝、神谷氏は日の出前からCHというよりGNの帰りを待っていた。6時を過ぎてまもなく、2008年度クラウン賞鳩舎にして同連合会の先輩・坪井和利氏(尾張連合会)から電話が入る。
「GNはまだ誰も帰ってないみたい。神谷さんのところはどう?」。
坪井氏のこの問いかけに答えようとしたまさにその時だった。青い脚環をつけたトリ――GNに送り込んだ1羽がトラップをくぐったのである。
「今、帰ってきよった!」。
坪井氏にそう答えて、すぐに確認に走る。アティスをチェックすると、それは間違いなくGNに出したトリだった。例年より明らかに速い打刻に時間が経つにつれ、見えてくる帰還状況。――これもまた速い! 前日と同じく期待感が高まる。
果たしてその日の夜、CH、そしてGNの総合審査が行われた。CHは総合にしても連盟にしても僅差で総合3位…。神谷氏よりさらに遠距離地帯で戦う強豪・藤田淳一鳩舎(セントレア連合会)に逆転されてしまったのだ。だが2番手以降、総合12位、19位と続き、入賞率は0点台をマークする。これで3レースの平均も1.0に収まり、Rg、地区Nでの不調はなんのその、一気に全日本優秀鳩舎賞に手が届く位置まで挽回した。一方GNは、CHでの無念を晴らす形――藤田鳩舎をまくり総合優勝! 鳩飼いにとっての「究極の勝利」を成し遂げた。これで神谷鳩舎は東海ブロック連盟が主催する広域レース全てを制覇したこととなる。
ヒロイン「ゴオルデン・ハルカ」は、いわゆる「横地系」の粋を集結したトリだった。父鳩は、モントーバンとボルドーでN優勝2回の超銘鳩「イワン」にローセンスの銘鳩「フリュー」の末裔にして「ミグライン」の代表鳩「マウス(静岡農水賞600K総合優勝)」をぶつけたブリーダー。母親もまた「マウス」の同系で「アラシ(アカデミー中距離エースピジョン賞3位)」の娘にシャトロー、ベルジュラックの2レースでProv.優勝した「プロフェッショナル」を系源とする「アトランタ(1997年静岡地区N総合優勝)」「シドニー(2000年総理大臣賞東部地区1位)」のラインで割ったトリだ。このカップルは「ゴオウルデン・ハルカ」を産み落としてまもなく、メス方が調子を崩したことで解消。父鳩は今年のGN総合8位鳩、母鳩は2010年の東海CH総合7位鳩をそれぞれ別の相方で創出している。また神谷鳩舎で見せた勢いの如く、2012年春は横地系――中でも今回のヒロインの両親に絡んでいる「マウス」は当たっており、中部3地区のGPと桜花賞の両方で総合優勝鳩を輩出している。
▲シルバー賞に選出され、東海連盟で現役最多の3回目となる全日本優秀鳩舎賞を見事に受賞!
長距離2レースの興奮冷めやらぬ中、5月19日にシーズンを締めくくる東海ブロックGPが開催。ここでも魅せてくれた。必ず飛んでくれると期待した配合――高塚氏の代表鳩「ミラクルポイント(東日本GN総合8位)」に自身のチャンピオン「ハルカ・ドリームベル(総理大臣賞東海連盟1位)とでとったオス鳩が総合2位に入賞。終わってみれば、最後の広域レースで総合ワンツースリーと最高の形でシーズンを締めくくった。
2012年春シーズンは、馴れない成鳩であるがゆえ、序盤、中盤は苦戦が続いた。がしかし、最後の広域レースで爆発し、全日本優秀鳩舎賞8枠を狙えるポジションまでもっていった――かつ、鳩飼いなら誰しもが夢みる「GN総合優勝」までも叶えた底力は、もはやトップフライターとしての‘貫禄’さえ伺える。結果、全日本優秀鳩舎賞であるシルバー賞に輝き、受賞回数を東海連盟では現役最多の「3」に更新した。クラウン賞の象徴――金色の王冠を被る日は着実に近づいている。
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東海ブロックCH総合3位
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父)ミラクル・ポイント号 02HB09233 BC 高塚久雄鳩舎作翔 現神谷鳩舎種鳩 2003年東日本GN3,716羽中総合8位 北関東5地区GP991羽中総合4位 ダーネンス・キング(1994秋国際レ ース全国92位)×ウェーゲン722 母)ハルカ・ドリームベル号 09SA16915 B 神谷 中鳩舎作翔 2010年総理大臣賞東海連盟1位 |
父)GPキング号 00HB00356 B 吉原広之鳩舎作 高塚久雄鳩舎使翔 2002年北関東5地区GP総合優勝(9地区最高分速) ファンブリアーナ×ペパーマン系
母)CHハルカ号 08SA22334 B 神谷 中鳩舎作翔2009年東海CH988羽中総合優勝 ユカ号(静岡連盟会長賞)の直子× (GPキング号×2005年三重地区N総合優勝) |
【2012年春・神谷 中鳩舎の活躍】
★東海ブロック連盟主催GP800K | 688羽中総合2位(連合会優勝)、18位(マーク鳩総合優勝)、19位 |
★東海ブロック連盟主催GN1100K | 230羽中総合優勝(連合会優勝)、8位、14位 |
★東海ブロック連盟主催CH1000K | 1,248羽中総合3位(連合会優勝)、12位、19位、21位 |
★東海連盟主催シルバーカップ600K | 783羽中総合28位、39位、48位 |
★東海連盟主催地区N700K | 1,895羽中総合18位、22位、23位、35~38位 |
★東海連盟主催Rg500K | 3,521羽中総合15位、20位、22位、23位 |
★個人タイトル | 愛鳩の友誌主催地区CH特別賞 全日本最優秀鳩舎賞(シルバー賞) |
★鳩賞 | 日本エースピジョン賞全国8位、9位 |
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